イヌの社会認知能力と飼い主の安全基地効果の関連

永澤 美保(同調的共生)、久世 明香(行動発達)、菊水 健史(社会内分泌)

研究の背景

イヌはヒトとの共生の長い歴史の中で、ヒトに似た社会的認知能力を獲得したと考えられています。その結果、本来は同種母子間等に見られる特別な関係性「絆の形成」が可能になり、現代のような伴侶動物になったといわれています。安全基地効果とは、自身を保護してくれる存在(安全基地)から心理的安心を得て、自由に行動することができることです。また、不安が低いことは認知能力を高めることもヒトの研究で分かっています。

そこで、イヌの社会的認知能力が飼い主との関係によって影響を受けるかどうか明らかにすることがこの研究の目的です。

アプローチ

一般のイヌの飼い主に協力して行う研究です。

  1. 飼い主とイヌに心拍計を装着し、簡単な認知実験に参加してもらいます。
  2. 飼い主にはイヌの気質・行動アンケートに回答してもらいます。
  3. 認知実験の結果と心拍変動、アンケート結果の関連を調べます(ジェネプロ生担当)
    ★行動実験は大学院生や学部3年生と一緒に行います。

期待される結果

この研究はたくさんのイヌの飼い主の協力のもとに、研究室の大学院生や学部生と一緒に実験を行います。そのため、自分自身の目標と全体の目標をしっかり認識したうえで取り組む必要があります。研究室ゼミに参加したり、教員や仲間との議論を積極的に行うことで、論理的な思考方法やプレゼンテーション能力を身に付けることができます。さらに行動実験の方法や、心電図の理解と心拍変動解析の手法を身に付けることができます。

現状とこれから

この研究テーマは、介在動物学研究室で取り組んでいる「児童・思春期における伴侶動物との関わりと私的世界の再構築の関連解明」の一環として実施します。すでに飼い主のもつ動物観やイヌとのやりとり行動の解析から、イヌの社会的認知課題への取り組み姿勢と成績に飼い主の動物観が関連している可能性が見出されています。心拍変動解析により課題取り組み中のヒトとイヌの情動状態を推定することで、飼い主とイヌの関係性をより深く考察することが可能となります。しかし、運動を伴う自律神経評価はとても困難です。データ特性を理解してコツコツと取り組む姿勢が求められます。

研究詳細PDF
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