小手森綾香(栄養疫学・食の情報)、石原 淳子(疫学・公衆栄養学),、中舘 美佐子(公衆栄養学)、髙田久美子(気候変動学)、西脇洋一(数理・データサイエンス)
人々が健全な食生活を送るためには、その食物を生産する環境が持続可能であることが必要不可欠です。日本では、国民の健康増進のために、何をどれだけ食べればよいのかを示すフードガイドとして「食事バランスガイド」などが用いられていますが、現時点ではこれらのガイドに環境の持続可能性についての視点は含まれていません。
近年の栄養疫学研究では、プラネタリーヘルスの視点から、毎日の食事が環境にどれだけ負荷をかけているのかを数値化する試みがなされるようになってきました。具体的には、食事摂取量のデータから、その食事が食卓に上るまでに生じた温室効果ガスや窒素の排出量、水の使用量、土地の使用量などを推定し、食事摂取量と環境負荷の関係を調べた研究結果が国内外で報告され始めています。
食事摂取量と環境負荷の関係が明らかになれば、環境負荷を減らすために、どのような食事構成が適切なのかを議論できるようになります。また、近い将来、プラネタリーヘルスのために環境負荷の低い食事構成にシフトチェンジしたときに、人々の健康が損なわれてしまっては元も子もありません。そうならないためには、環境負荷の異なる食事が、人々の健康にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしておくことも重要です。
この研究プロジェクトでは、食事調査で得られたデータから食事の環境負荷量を推定し、前向きコホート研究により食事の環境負荷と人々の健康との関連を明らかにすることを目的とします。さらに、地球温暖化における食事の環境負荷の寄与度についても検討します。
疫学研究では、対象者の方から個人情報や生体試料をお預かりして、データ分析を行います。個人情報を守るためには、厳密なデータの取り扱い規則があり、得られた研究結果は社会に還元する使命があります。そのため、時間やルールを守れる方、責任感のある方に仲間になってほしいと思っています。そのほか、統計解析やプログラミングなどのデータサイエンススキルを身につけたい方、将来、人の健康に貢献する仕事につきたいと思っている方も歓迎します。