植竹勝治(応用動物管理学)、加瀬ちひろ(応用動物行動学)、小玉敏也(環境教育学)、福井智紀(理科教育学)
研究の背景
※One Welfareは、人と動物と自然の福祉と健康性は一体との考え方です。
- 大自然や芸術を前にしたときに心理的に圧倒される感覚を覚えることをAwe(畏敬の念)体験と言います。
- Awe体験には、精神的・身体的にポジティブな影響があることが分かっており、例えばAwe体験を通じて、食欲や思考力の低下、気分の浮き沈みの原因物質であるサイトカイン(IL-6)が減少することが報告されています(Stellar et al. 2015)。
- 本プロジェクトでは、動物園・水族館訪問にもAwe体験効果が含まれるとの仮説を立て、その検証と効果の正体に迫ることを目指します。
アプローチ
- 麻布大学に通う大学生から被験者を募集する。被験者には実験内容について説明し、合意を得る。
- 被験者に、動物園・水族館訪問時に、ウェアラブルカメラとウェアラブル心電計を装着し、視聴シーンと心拍変動成分・係数等との関連を記録・計測・解析する。
- また、決めた見学時間の前後に、被験者から唾液を採取し、IL-6及び正と負の情動をそれぞれ類推させるオキシトシンとコルチゾールを定量・測定する。
- 心拍変動解析および生化学分析の結果・データに基づき、Awe体験仮説を検証し、具体的な影響について考察する。
期待される結果
- 先行研究で、バイオフィリア環境(自然や他の生物に対する人の生得的な関心を引き出す環境)としての動物園は、人の心身へ良い効果があることが示唆されている(坂上2009 学位論文)。
- 本研究を通じて、動物園・水族館訪問の影響に関する、さらなる科学的エビデンスが得られる。
- それにより、動物園・水族館の存在意義について考えるきっかけを提供できる。
現状とこれから
- 本パイロットスタディも、サブテーマを変えながら3年目になります。
1年目には、動物園動物における常同行動の発現状況と展示形態の調査を、2年目には、水族館における常同行動の発現状況調査をテーマにしてきました。
- 本プロジェクトへの参加学生には、先輩方の活動内容と成果にも触れてもらい、そちらからも何かを学んでもらいたいと思います。
- 本プロジェクトの経験が、参加学生が将来の就職や進学に少しでも活きれば、担当者としてはこの上ない喜びです。