環境変化に伴うイヌの行動内分泌反応に対するサプリメントの影響

久世明香(行動発達)、茂木一孝(社会神経学)、永澤美保(同調的共生)、菊水健史(社会内分泌)

研究の背景

近年、様々な犬猫用のサプリメントが開発されています。神経の興奮を抑える物質を含むサプリメントでは、老齢犬に2週間投与することにより、飼い主が評価した問題行動のスコアに改善が見られたという報告がされていて、犬の精神状態改善に有効である可能性が期待されています。

盲導犬候補個体は、その育成過程の中で、パピーウォーカーへの飼育委託(約8週齢)と訓練センターへの入所(約1歳齢)という大きな環境変化を2回経験します。これらの環境変化の直後に、消化器症状や呼吸器症状が見られたり、吠えが増えるなど、身体的あるいは行動学的な問題が起こることがあります。

その原因として、環境変化に伴うストレスが考えられているものの、いずれも避けることができない環境変化であるため、何らかの対策が求められています。そこで、本プロジェクトでは、盲導犬候補個体を対象に、サプリメントの投与が環境変化に伴う行動内分泌反応に影響を与えるかを調べます。

アプローチ

  • 対象個体:盲導犬候補個体
  • 対象時期:環境変化(飼育委託or入所)直前から1ヶ月間
  • 検証方法:神経の興奮を抑える物質を含むサプリメントの投与群とその物質を含まない偽薬(プラセボ)の投与群に分け、以下を実施します。
  1. 隔離実験の動画を用いて、イヌの行動観察をします。
  2. 尿を用いて、イヌのストレスホルモンの基礎値を測定します。
  3. 行動データ・ホルモンデータについて、2群を比較し、サプリメント投与の影響を検証します。

期待される結果

  • 環境変化由来ストレスに対する、神経の興奮を抑える物質の効果解明
    →盲導犬の福祉に貢献し、盲導犬育成率向上の一助となりえます
     家庭犬における環境変化由来ストレスへの対策にも役立つ可能性があります
  • 参加学生は、ホルモン測定の技術、統計学的解析の手法を身に付けることができます

現状とこれから

①の行動観察の部分はすでに終えているため、直接作業をするのは②③になります。
研究結果は、科学雑誌への投稿などにより、公表予定です。

求める学生像

プロジェクトメンバーの一員として責任感を持ち、サンプルやデータを丁寧に扱い、 コツコツ取り組んでくれる方をお待ちしております。

研究詳細PDF
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