ジェネプロの指導教員からのメッセージをご紹介します。教員から見たジェネプロの魅力について思い思いに語ってくれています。

動物を見つめるほど「見える世界」が変わる

加瀨ちひろ(獣医学部 動物応用科学科)

担当プロジェクト

GO! DO!! ZOO!!! Project 2022

何を調べているの?

私たちのプロジェクトでは、動物園で繁殖に取り組んでいるアマミトゲネズミの「繁殖成功の鍵」を探る研究をしています。アマミトゲネズミは奄美大島にのみ生息する日本固有種で、絶滅危惧種です。複数の動物園での繁殖に取り組んでいますが、思うように進まないケースもあり、成功の鍵を探る必要があります。プロジェクトでは、オスとメスの相性と繁殖成功を、お互いに行うグルーミングなどの行動頻度で評価できるか研究しています。プロジェクトに参加する学生さんは、毎月動物園から提供されるビデオデータを観察し、解析を行なっています。これまでに解析したビデオデータは数千時間に上りますが、ひたすらに観察を続けていると、どのタイミングで巣から出てくるのか、次はどの行動が出やすいか、などアマミトゲネズミの行動を感覚的に予測できるようになってくるようです。

何か分かったことは?

「このペアは全然一緒に動いていないのでダメそうです」や「最近寄り添っていることが多くていい雰囲気です」など、アマミトゲネズミたちの恋バナに花が咲きます。あるペアについては相性が良さそうでしたが、オスの圧が強すぎたようでメスの体重が減少し、一度別々にされてしまいました。その後、繁殖シーズンになり再びペアを一緒にすることにしました。次こそ上手くいくことを期待していましたが、今のところあまり芳しくありません。このように動物相手の研究は必ずしもこちらの意図していたように進まない場合もあります。

学生さんはどんな様子?

うまくいかない時でも、学生さんたちは「納得がいくところまで研究を続けたい」と意欲的です。プロジェクトに参加したての頃は、共同研究者の動物園スタッフの方に質問もなかなかできなかったのが、今や堂々と、対等な研究者として意見を交わすようになっていきます。アマミトゲネズミを見つめた分だけ、皆さん自分の研究である自覚が芽生えてきているようです。指導教員と学生という枠を超えて、徐々に一緒に研究を進める仲間になってきたなと、皆さんの成長を感じています。

学生と一緒に自然の変化に驚く

新田梢(生命・環境科学部 環境科学科)

担当プロジェクト

地域の植物相から環境を知る

何を調べているの?

私たちのプロジェクトでは、麻布大学からJR横浜線で2駅の古淵駅から徒歩圏内にある緑地で調査区を設定して、区画内に生育している植物を定期的に記録しています。この場所は、地域の方の活動によって自然の植生が残されている貴重な場所で、高尾山にも生えているような山地の植物も残されており、東京都や神奈川県の絶滅危惧種の植物も生育しています。大学から近い場所をフィールドとすることで、学生たちが参加しやすく、定期的な調査をしやすいこと、学生自身の生活圏の自然の重要性を認識しやすいことを優先しました。

何か分かったことは?

調査では、区画内に生育している芽生えや実生も漏らさずに探していくのですが、私も今まで芽生えや実生の時期の葉だけをじっくりと見たことがない植物もあり、新しい発見もあります。この定期調査から、新たな研究のテーマも生まれました。同じ場所で四季を通して観察を続けることの意義を再認識しています。

学生さんはどんな様子?

学生たちは、調査で見られた鳥や大学生活の話題でも盛り上がって、毎回楽しそうに調査活動を行っています。学生たちは自然や生き物に興味はあるけれど、野生の植物についてはあまり知らない状態からスタートしますが、まずはフィールドに出て、現場を見ることから少しずつ経験を積んでいます。図鑑で植物の名前を確認したり、フィールドノートに記録したりするうちに、何度も出てくる植物から認識できるようになりました。

好奇心を活かした学びを学生に

島津德人(生命・環境科学部 食品生命科学科)

担当プロジェクト

動物の歯周病は人間からうつる??

何を調べているの?

動物園や水族館の動物達も高齢化が進み、歯周病の増加が問題になっています。感染経路は不明ですが、もしかすると歯周病菌が飼育員などから感染している可能性があります。これまでに、動物園のアシカ、ライオン、クマからヒトの歯周病菌が検出されることを確認しています。つまり、自然界に棲息する野生動物たちでも、動物園や水族館で飼育されるようになると、ヒトと動物との“距離”が縮まることで歯周病が発症しているのかもしれません。そこで、私のプロジェクトでは、動物と飼育員から歯周ポケット内の唾液を採取し、ヒトで検出される歯周病菌の検査を行い、歯周病原性細菌の交差感染の状況を調べています。

学生さんはどんな様子?

麻布大学は歯科大学でありませんので、ヒトや動物の歯周病を学ぶ機会はあまり多くありません。そのため、学部・学科を問わず、歯科・口腔科学分野に興味を持つ好奇心旺盛な学生たちが私の研究プロジェクトに参画しています。普段は、全国約20カ所の動物園・水族館の協力を得て、飼育動物と飼育員から唾液をサンプリングして、歯周病菌の有無や種類を同定し、ヒトから動物に感染していないかを学生と一緒に調べています。

動物からの唾液サンプリングは、検査や治療の目的で動物に麻酔をかけるタイミングに合わせて、学生らと一緒に施設を訪れて行っています。実は、この“サンプリングの機会”が学生にとっては大きな学びの場になっています。動物は麻酔で眠っていますので、唾液を採取するだけでなく、動物の体を優しく触ったりじっくり観察したりもできます。当然、学生の知的好奇心が刺激されます。普段はおとなしくしている学生も、目を輝かせながら飼育員や獣医師に積極的に質問し、学ぶ楽しさを感じている様子が私に伝わってきます。こうして、低学年から自分の知らなかった知見を広げられるのもジェネプロの良いところだと思います。

研究プロジェクト一覧